ブログ・コラム
音大卒がクリエイティブである説を検証する
2025.04.13
近年、「音大卒業生はクリエイティブだから社会に役立つ」という考え方が広まり、企業や大学でも音大卒を積極的に採用するケースが増加しています。しかし、社会科学の視点で深掘りしてみると、この話はそれほど単純ではありません。
音大卒がクリエイティブである証拠とは?
まず、「音大卒はクリエイティブだ」と言われる根拠はどこにあるのでしょうか。音楽大学では感性や表現力、即興的にアイデアを創出する力を育てる訓練が多く行われます。ジャズや現代音楽の授業は、その場で新しい演奏を創り出す力を育てるのに適しています。しかし、これらが実際の社会でどれほど活かされているかを冷静に見る必要があります。特に再現芸術(クラシック音楽など)を学ぶ場合、一定の枠内で表現する能力が求められ、自由にアイデアを創り出す余地が実はそれほど広くないという指摘もあります。つまり、再現芸術に特化した音大教育は、「本当に自由で柔軟な創造性」を伸ばすには限界がある可能性があるのです。
クリエイティブとストレス耐性の両立は可能か?
音楽大学のもう一つの売りとして、「上下関係や師弟関係、長時間練習を通じたストレス耐性」が挙げられますが、ここにも疑問が生じます。本来、創造的な能力を育てるには自由で開放的な環境が必要だと言われていますが、実際の音楽大学は非常に厳格な師弟関係や、体育会系的な上下関係が強いところが多いです。このような環境がむしろ創造性を抑え、型にはまった人材を生み出す可能性も否定できません。つまり「クリエイティブ」と「ストレス耐性」の両立は、音大の現場で本当に成立しているか、検証が求められる課題でもあるのです。
指摘されにくい音大卒・真の魅力
クリエイティブ、ストレス耐性とは別の角度から見ると、音楽大学の出身者には比較的裕福な家庭出身者が多いという現状があります。音楽教育には高額なレッスン費や楽器の購入費など、経済的負担が大きく、その結果、裕福な家庭出身の学生が多く集まる傾向があるからです。こうした学生たちは、社会的なマナーや対人コミュニケーションにも長けていることが多く、企業が求める「社会性」や「継続的な勤務」への適応力を持つことがあります。つまり企業側が音大卒を採用する動機の一部は、実は「クリエイティビティ」だけではなく、「組織に馴染む力や安定性」を求めている可能性もあるのです。
まとめ
音大卒のクリエイティビティが本当に社会に役立つかどうかは、企業や大学など採用側がその資質をどのように活かす環境を整備するかにかかっています。芸術的感性だけを強調するのではなく、環境や仕組みをきちんと整えることが求められるのです。

