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ブログ・コラム

雅楽器の旋律楽器としての可能性を探る

2025.03.18

~日本の伝統音楽の系譜に沿って、雅楽器を再発見する~

日本の音楽史を振り返ると、「伝統」と「革新」のせめぎ合いが絶えず続いてきたことがわかります。雅楽は平安時代に確立され、その後も武士の時代を経て能楽・邦楽・民謡などの新しい音楽が発展していきました。しかし、雅楽自体は宮廷音楽としての格式を保ちながらも、時代の変遷にあまり影響されることなく「変わらないもの」として伝えられてきました。

しかし、雅楽で使用される楽器——龍笛・篳篥・笙——は、果たして本当に「変わらない」楽器なのでしょうか?
音楽の歴史を紐解くと、これらの楽器が持つ旋律楽器としての可能性が、古来からさまざまな音楽ジャンルの中で生かされてきたことが見えてきます。
ここでは、日本の伝統音楽の系譜に沿いながら、雅楽器の旋律楽器としての可能性を探ってみましょう。

① 龍笛(りゅうてき):日本の「横笛文化」とのつながり

~雅楽から能管、篠笛へと続く、日本の旋律楽器の系譜~

龍笛は、雅楽において「天と地をつなぐ龍の鳴き声」として扱われる、非常に重要な旋律楽器です。しかし、日本における横笛の歴史を考えると、龍笛だけが特別だったわけではなく、雅楽以外の音楽にも横笛文化は継承されてきたことがわかります。

◆ 龍笛の発展と日本の横笛文化

能楽の能管(のうかん)
室町時代になると、龍笛から発展した能管が登場し、能楽の中で「劇的な音響効果」としての役割を果たすようになります。能管は龍笛よりも音量が大きく、音域も独特の倍音を持っており、雅楽の静的な響きとは異なり、動的な劇場音楽としての役割を持つようになりました。
民謡・祭囃子の篠笛(しのぶえ)
江戸時代に入ると、民間音楽の中で篠笛が普及し、日本各地の祭囃子や民謡に欠かせない楽器となります。これは、雅楽の形式から解放され、より庶民の生活に密着した音楽へと進化した結果といえるでしょう。


◆ 龍笛の旋律楽器としての可能性

邦楽の他ジャンルとの融合
例えば、龍笛と篠笛を組み合わせたアンサンブルや、能楽の囃子との融合を試みることで、日本の横笛文化全体の発展につながる。
即興演奏の可能性
現在の雅楽では即興的な演奏はほとんど見られませんが、能管や篠笛の奏法を取り入れることで、新たな表現方法が生まれる可能性がある。

② 篳篥(ひちりき):「泣きの旋律」を生む和製オーボエ

~雅楽だけにとどまらない、篳篥の旋律表現の豊かさ~

篳篥は、雅楽において主旋律を担当する楽器で、短い管体とダブルリードから生み出される独特の音色が特徴です。その力強くも哀愁のある音色は、まさに「泣きの旋律楽器」と呼ぶにふさわしいものです。

◆ 篳篥の音楽史的系譜

・源流は中国の「管子(かんし)」
篳篥は中国の「管子(グアンツ)」をルーツに持ち、奈良時代に日本に伝来しました。
・雅楽以外での使用例
近代以降、篳篥は雅楽の枠を超えて使用されることが増えてきました。例えば、現代邦楽の作曲家による篳篥独奏作品や、篳篥を用いたジャズ・即興演奏なども登場しています。

◆ 篳篥の旋律楽器としての可能性

・民俗音楽との融合
篳篥の音色は、沖縄の「琉球笛」や、津軽三味線などの民俗音楽とも親和性があり、新たなコラボレーションが期待できる。
・映画音楽・劇伴での活用
すでに一部の映画音楽では篳篥の音が使われていますが、もっと積極的に用いれば、日本独自の音楽表現が可能になる。

③ 笙(しょう):静寂の中のハーモニー

~「雅楽の和声楽器」は、なぜ旋律楽器になれるのか?~

笙は、和音を奏でる雅楽の和声楽器ですが、実は単独で旋律を奏でることも可能です。特に「天から降り注ぐ光の響き」とも称されるその音色は、旋律としても十分な表現力を持っています。

◆ 笙の歴史的背景

笙は、中国の「笙(シェン)」がルーツで、日本に渡った後、独自の発展を遂げました。
明治時代以降、西洋音楽の影響を受けながらも、独自の伝統を守り続けてきました。


◆ 笙の旋律楽器としての可能性

・ソロ楽器としての演奏
近年、笙のソロ演奏作品が増えており、雅楽以外の文脈でも笙が活用される機会が増えている。

・現代音楽やアンビエントとの融合
笙の倍音成分は、ミニマル・ミュージックやアンビエント音楽との親和性が高く、新しい音楽ジャンルへの展開が期待できる。

結論:雅楽器の旋律楽器としての可能性は広い!

雅楽器は、歴史的に見ても決して固定されたものではなく、時代ごとに変化しながら受け継がれてきました。
そして今、雅楽器を旋律楽器として活用することで、新たな音楽の可能性が広がっています。

・龍笛 → 能管・篠笛との融合による即興演奏の可能性
・篳篥 → 「泣きの旋律楽器」として、映画音楽やジャズにも応用可能
・笙 → アンビエントやポスト・クラシカルとの融合による新たな表現

日本の音楽史を紐解きながら、雅楽器の新しい可能性を探ってみるのも面白いのではないでしょうか?

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