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歴史上、最も短気だったクラシック音楽家たち
2025.02.12
クラシック音楽の世界には、気難しく厳格な性格の音楽家が数多く存在した。しかし、中には「短気」と言われるほど激しい気性を持ち、時には楽譜を破り捨て、オーケストラを怒鳴りつけ、決闘沙汰に発展することもあった人物がいる。今回は、そんな短気な音楽家たちをランキング形式で紹介し、彼らの怒りのエピソードを掘り下げる。
第5位:フランツ・リスト(Franz Liszt, 1811-1886)
リストは一般的に穏やかで洗練された人格者と見なされているが、若い頃は非常に気性が荒く、演奏中にピアノを叩き壊すこともあった。ある演奏会でミスをした弟子に対し、楽譜を投げつけ「この音はお前の脳にも響いているのか?」と怒鳴りつけたという逸話が残っている。(出典:Walker, Alan. "Franz Liszt: The Virtuoso Years, 1811-1847." Cornell University Press, 1987)
第4位:アルカン(Charles-Valentin Alkan, 1813-1888)
天才的な技巧を誇ったアルカンは、孤独で気難しい性格でも有名だった。彼は出版した楽譜に自ら激怒し、それを燃やしてしまったという記録がある(出典:Smith, Hugh Macdonald. "Alkan: The Enigma." Kahn & Averill, 1977)。友人のフレデリック・ショパンと音楽の解釈を巡って口論になり、一時的に絶交状態になったこともある。
第3位:リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner, 1813-1883)
ワーグナーは自らの音楽的ビジョンに絶対的な自信を持っており、それに従わない者には容赦しなかった。あるオーケストラリハーサルで演奏家が彼の指示に従わなかった際、「貴様らは牛か!音楽というものを理解していないのか!」と怒鳴り、リハーサルを打ち切った。(出典:Newman, Ernest. "The Life of Richard Wagner." Knopf, 1946)彼の短気さは楽団員に恐れられ、演奏会の準備中に何度も衝突が起きた。
第2位:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)
ベートーヴェンの短気は伝説的であり、多くのエピソードが残っている。彼は演奏中に観客の話し声が聞こえると、演奏を止めて怒鳴りつけたり、楽譜を投げ捨てたりした。(出典:Cooper, Barry. "Beethoven." Oxford University Press, 2000)ある時、弟子のカール・ツェルニーがミスをすると、椅子を投げつけて「愚か者!」と叫んだという話もある。彼の怒りは貴族にも向けられ、かの有名な「貴族とは何だ?才能を持つ者こそが真の貴族だ!」という発言も残っている。
第1位:ニコロ・パガニーニ(Niccolò Paganini, 1782-1840)
ヴァイオリンの魔術師パガニーニは、極端に気性が荒かったことで知られる。リハーサル中にオーケストラのメンバーがミスをすると、即座に演奏を止め、楽譜を放り投げて退場してしまうことがあった(出典:Blum, David. "Casals and the Art of Interpretation." University of California Press, 1977)。ある演奏会では、伴奏のピアニストが彼のテンポに合わせられなかったため、舞台上でピアノの蓋を閉じ、演奏を強制終了させたという逸話がある。さらに、演奏後に観客の態度が気に入らないと、チケット代を返金し「二度と来るな!」と叫んだというエピソードも伝わっている。
短気な音楽家の気性とその影響
これらの音楽家たちの短気さは、単なる性格の問題ではなく、彼らが音楽にかける情熱の現れだったとも言える。時にその怒りは周囲との対立を生み出したが、その厳格さが生んだ演奏や作品の完成度は極めて高く、彼らがクラシック音楽界に与えた影響は計り知れない。短気な性格が、天才的な創造力と表裏一体であったことを物語るエピソードの数々である。

