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DTMの進化と生演奏録音の価値——なぜ今もギターやドラムを「生」で録るのか?
2025.04.03
DTM(デスクトップ・ミュージック)の技術が飛躍的に進化し、ギターやドラムの打ち込みは驚くほどリアルな音を再現できるようになりました。ソフトウェア音源やMIDIのプログラミング技術によって、細かいニュアンスまで表現することが可能になり、もはや「打ち込みでは生演奏のリアルさが出せない」とは言い切れない時代です。
それにもかかわらず、多くのプロの音楽制作現場では、依然として生のギターやドラムの録音を取り入れた音源が制作されています。本コラムでは、技術的な観点から「なぜ今でも生演奏を録音するのか」について考察してみたいと思います。
1. ギターやドラムの打ち込みの限界
DTM技術の進化とはいえ、ギターやドラムの打ち込みにはまだいくつかの技術的な課題が残っています。
◆ ① ギターの「倍音」と「フィンガリング」の再現性
ギターは単に弦を鳴らすだけではなく、ピッキングの強弱、ミュートの加減、フレットごとの響きの違い、運指によるレガートの繋がりなど、非常に複雑な要素を持っています。
特に倍音の響き方は、ピックの角度や指弾きのタッチによって微妙に変化し、完全にプログラムで再現するのは困難です。現在のギター音源はアーティキュレーション(奏法の切り替え)を細かく設定できますが、リアルな演奏ほどの自然な流れは得られにくいのが現状です。
◆ ② ドラムの「ダイナミクス」と「グルーヴ」の難しさ
ドラム音源は多層的なサンプルを重ねることでリアルな音を作ることが可能ですが、プレイヤー独自のノリ(グルーヴ)を再現するのは難しい点があります。
・スネアやバスドラムの「ゴーストノート(弱い音)」
・シンバルの微妙な揺れや余韻
・フィルインのスピード感
これらの要素を完全に打ち込みで再現するには、相当な時間と手間がかかります。生録音では、ドラマーの即興性や流れるような演奏がそのまま反映され、より「自然な音楽的な流れ」が生まれます。
2. 生演奏の「演奏者の個性」が音に宿る
DTMによる打ち込みは、音の正確さを追求するのに適しています。しかし、音楽の魅力は「正確さ」だけではありません。
ギタリストやドラマーの個性が音に表れることが、音楽にとって大きな意味を持つのです。
たとえば、ブルースやロックのギターソロでは、プレイヤーごとのフレージングやビブラートの揺れが独自の個性を生み出します。また、ジャズやファンクのドラムでは、ドラマーごとの微妙なタイム感やグルーヴの違いが大きく影響します。
打ち込みでは「完璧に整った演奏」は作れても、「人間らしいニュアンス」を生むには限界があるのです。
3. 音響的な違い—アンビエンスの重要性
生演奏を録音する最大の技術的利点のひとつは、「空間の響き(アンビエンス)」 です。
DTMのギターやドラム音源には、あらかじめ録音されたアンビエンスが含まれています。しかし、それはあくまでサンプルの一部であり、楽曲全体の空間感を自然に作り上げるには限界があります。
生録音では、スタジオやライブハウスの響きがリアルに反映され、音に立体感が生まれます。特にドラムは、マイクの配置やルームマイクの活用によって、奥行きや迫力が大きく変わるため、打ち込みでは再現が難しい「生々しい空気感」が得られるのです。
4. 結論:打ち込みと生演奏は「使い分け」が鍵
もちろん、すべての楽曲で生演奏が必要なわけではありません。現代の音楽制作では、打ち込みと生録音を適切に組み合わせることで、最適なサウンドを作ることができます。
◆ 打ち込みが向いている場面
EDM、ヒップホップなど、タイトなリズムが求められるジャンル
細かく編集する必要があるプロジェクト
予算や時間の制約がある場合
◆ 生録音が向いている場面
ロック、ジャズ、ブルースなど、人間らしいグルーヴが重要な楽曲
ダイナミクスや表現力を重視する楽曲
空間的な響きを活かしたい場合
「生」の良さを活かしながら、DTMの技術も取り入れる
DTMの技術は、音楽制作の自由度を大きく広げました。しかし、「生演奏だからこそ生まれるグルーヴや個性、響きの深み」は、打ち込みだけでは完全に再現できません。
今後の音楽制作では、「打ち込みと生録音のハイブリッドな活用」がさらに重要になっていくでしょう。適材適所で両者を使い分けることで、より魅力的な音楽が生まれるのではないでしょうか。

