EN JP

LANGUAGE

ブログ・コラム

プーランクの通俗的で優美な名曲:軽妙洒脱なフランスの粋

2025.03.15

フランシス・プーランク(1899-1963)は、パリのエスプリを体現した作曲家。シリアスな宗教曲からウィットに富んだシャンソン風の作品まで、彼の音楽はどこか「軽妙で洒脱」、そして「通俗的」とすら言われることがあります。しかし、その“通俗性”こそがプーランクの魅力。親しみやすいメロディーの中に、ウィットや洗練が散りばめられた作品は、彼独自のエスプリを反映しています。

今回は、そんなプーランクの作品の中から、ちょっと俗っぽいけれど優美なメロディーを持つ曲をいくつかご紹介しましょう。


◆1. 《村人たち》 "Rustiques" (1951) –《ナゼールの道化芝居》より◆
このピアノ組曲《ナゼールの道化芝居 (Novelettes pour piano)》の一曲目《村人たち》は、冒頭から「おお、これはもうパリの街角!」と言わんばかりの軽快なリズム。まるでモンマルトルのカフェでワイン片手に語り合うパリジャンたちの会話が聞こえてくるかのようです。メロディーはまるでシャンソンのように親しみやすく、ちょっとしたおしゃれなエゴイズムが漂います。

◆2. 《フルート・ソナタ》 (1956)◆
プーランクの作品の中でも特に有名な一曲。この曲の第2楽章「カンティレーナ」は、ため息が出るほど美しい旋律が特徴。フルートの流れるようなラインと、ピアノの軽妙な伴奏が、洗練されたフランスの美意識を感じさせます。ここには「通俗性」というよりも、「気品をまとった親しみやすさ」があります。まるで、パリの午後のカフェでエスプレッソを楽しむかのような優雅な時間。

◆3. 《3つの無窮動》 (1918)◆
19歳のプーランクが書いたこのピアノ曲は、まさに「軽快な狂騒曲」。一つのリズムとモチーフがずっと続く、いわゆる“無窮動”のスタイルですが、どこかストラヴィンスキー的なリズムの妙もありながら、妙に軽やかでユーモラス。プーランク流の“音楽的いたずら”とも言えるこの曲、聴いているとまるで漫画のドタバタ劇のBGMのようで、思わず笑ってしまいます。

◆4. 《ピアノ協奏曲》 (1949)◆
この曲、最初の主題を聴くと「えっ?これはプーランク?」と驚くかもしれません。なぜなら、出だしがまるで1920年代のキャバレーのジャズバンドのようなムードだからです。しかし、そこから続くメロディーは、フランスの香りを纏った優雅なワルツ風。プーランク特有の「おふざけ」と「気品」が絶妙に融合した作品で、彼の魅力がぎゅっと詰まった名曲です。

◆5. 《愛の小径 (Les chemins de l’amour)》(1940)◆
「プーランクといえばこれ!」というほど、広く愛されているシャンソン風の歌曲。元々は劇音楽の一部として書かれましたが、その甘美なメロディーが評判を呼び、単独で演奏されることが多くなりました。歌詞がなくても、ピアノで弾くだけで十分に“エスプリ”が感じられる曲。メロディーの美しさ、リズムの心地よさ、そしてちょっとノスタルジックな雰囲気が、プーランクの通俗性の中にある“品”を際立たせます。

まとめ:通俗性の中に宿る洗練

プーランクの音楽は、よく「カフェ・ミュージック」と揶揄されることがあります。しかし、それは決して否定的な意味ではなく、「フランスの日常に溶け込んだ、洗練された音楽」と言い換えることができるでしょう。彼の音楽には、どこか“気軽さ”がありながら、それが単なるBGMにならない深みがある。だからこそ、一度ハマると抜け出せない魅力があるのです。

今回紹介した曲を聴けば、きっとプーランクの“粋”を感じられるはず。さあ、カフェオレでも飲みながら、プーランクの音楽に耳を傾けてみませんか?

一覧